IQと投資能力の関係について

はじめに

脳と相場のポリリズムの考察をきっかけにIQと投資能力に関係が見られないか疑問を持った。今後の投資活動において何かヒントになるものはないか少し考えてみようというもの。

以下の二つをテーマに進めていく。

〇投資家のIQは高いのか
〇IQと投資能力に関係はあるのか

結果によって考察は紆余曲折するかもしれない。決して私個人が「IQと投資能力には関係がある!」と断言している訳ではない事を先に記しておく。

どのように検証を行ったか進めていく上で「そもそもIQとは何なのか」という認識を統一したい。できるだけ簡単に。IQとはまずそんな事から始まる。

IQは知能指数という。知能とは何なのか。ある研究者は「知能が高いとは?」を人々にアンケート調査を行い、結果、知能の認識は文化圏によって異なる事が分かった。更には研究者によっても定義は様々という。そこでエドウィン・ボーリング氏は当時の心理学に操作主義を持ち込み、以下のような言葉を残している。

『知能とは知能テストが測ったものである』

操作主義

「長さとは何か」を議論するのではなく、ある特定の物差しを当てて測る手続きを記述して、定義に置き換えた。

IQってホントは何だ?より引用

 

IQ算出方法の考え方は主に二つある。まず一つは、生活年齢(実年齢)と精神年齢の比を基準としたIQの算出方法。二つ目は、同年齢集団内での位置を基準とした標準得点としての「偏差知能指数(Deviation IQ, DIQ, 偏差IQ、偏差値知能指数)」がある。難しい。

簡単にまとめる。
前者:多くの人が認知しているIQ算出法
後者:出現率でIQを割り当てる算出法

以上の二つ。
前者は生活年齢に対してどれだけ精神年齢が発達しているかという指標に過ぎない。被験者の殆どが成人者である事が予想される中でこの方式は適正とは言いがたい。また「精神年齢」を定義し、「この問題を解けたらどうして精神年齢が高いの?」と疑問を持つ人を納得させなければならない。

対して後者は分かりやすい。
出現率とは便利なもので、例えばIQ110(SD15)の出現率は約四人に一人、地球上の総人口の上位25.2%にあたる。(SDについては後述する)100人の被験者がいれば25位付近に位置し、10000人いれば2520位付近に位置する。つまり、あらかじめIQ110という席が決まっており、被験者Aを上回った人がいれば被験者Aは降格する。偏った高いスコアが続出した場合、皆が優秀というより、偏ったスコアを出したテストの信憑性をまず疑わなければならない。場合によってはその高い平均値として出たIQを基準にした上で進めていく必要がある。

この類の話では、「こんな問題でIQを測定できる訳がない!」という意見が現れる。しかし、自分よりスコアが高い人に対しては、”自分よりスコアが高い事が確定”しているので、「この問題に関しては〇位(IQ〇〇)である」のは事実として受け入れなければならない。

最近ではこの算出法が主流となっている事もあり、今回はこれを採用する。IQの指標として世界的に最も使用されるウェクスラー成人知能検査(WAIS)は、今回採用する偏差知能指数によって算出されている。つまり、上記の後者(偏差IQ)にあたる。

先ほど小出しにした「SD」とは標準偏差の事で”ばらつき”具合を示すもの。SD15とは15ポイントのばらつきを許容するとかそんな解釈でいいと思う。

IQで使われるのは主に「SD15」「SD16」「SD24」。この値が小さければ小さいほど正常値の基準が狭くなるのでIQは低めに出るが、これは表記の問題であり、意味や希少性に影響する訳ではない

MENSA(メンサ)という団体をご存知だろうか。

高知能団体を謳う組織だが、入会するにはIQ131以上が必要とか、いやIQ148以上だとか、メディアは結構いい加減な表現をしているが、これらは「SD」が違う事によって生じるもの。それらに対してメンサ側はあくまで「人口の上位2%」としている。

これがSD15だとIQ131、SD24だとIQ148に相当するので世間では勝手な解釈で認知されているが、どれも間違いではない。

一般的にIQの算出はSD15を採用しているものが多く、ここではSDの表記は省略するが、以下全てのIQはSD15とする。

 

前置きが長くなったが、今回のIQの測定はノルウェー・メンサのHPから拝借したサンプルで検査を行った。その内容は、現在IQテストで主流となっているレーヴン漸進的マトリックス(=行列推理)で構成されている。 これは幾何学図形の法則性を問うもので、特別な知識や言語理解を必要とせず、国際的に極めて公平性が保たれた状態で検査を行う事ができる。つまりそれは多くの被験者のもとで洗われたテストという事を示している。

また、著書『知能のパラドックス』では一般知能(演繹的・帰納的に推理し、抽象的に考え、類比を使い、情報をまとめ、新たな領域に応用する能力)との相関が最も高いと強気に記している。

 

仮説

投資をする目的は資産を「増やす」「守る」ため。この二つから投資家を構成する層を考えてみる。

①お金を増やしたい、または増やさなければならないと考えている層

実生活の不安や不満が強く、現代社会に生きづらさをより感じている人達と推測する。
総人口のIQ分布は以下の(表1) 正規分布の通りとなるが、投資家の分布はこの正規分布から左右にばらつくんじゃないか(表2)。中央値100±15(1σ)区間外へどのくらい”はみ出すか”を観測する。

表1 正規分布

 

表2 投資家のIQ分布予想

②リスク分散のため資産を守る投資をしている層

すでに社会的成功を収めていると考えられる層。IQが生涯年収や学歴に相関がある事が事実だとすると、この層が平均を押し上げると見る。以上から、投資家の平均IQは一般より高く、更にばらつきが大きいと予想

 

仮説2

IQスコアが投資能力に及ぼす影響

今回の検査で使用する行列推理のパターン分析と、相場におけるチャート分析が類似していると感じ、行列推理のスコアに比例して投資成績も良くなるんじゃないか。その両者の分析パターンを以下に簡単にまとめた。

図1行列推理

テストの大抵は縦軸か横軸で法則性を持っているが、この問いの落とし穴は、縦横どちらを見てももっともらしい正解に辿り着いてしまう事。

ヨコで見ると、①黒+白=黒、②白+黒=黒、③黒+黒=白 三つの情報しかなく、白+白=?は③の不確定な法則により同色反転と判断しかねない。

しかし、タテで見ると白+白=白の情報がきちんと含まれているのが分かる。黒は白に反転するが、白は白のまま。何ともひっかけのようなこの性質を排他的論理和とか言う。

 

図2チャートパターン

相場でも囲碁でいう定石のようなものが存在する。それらしいものを当てはめてパターン化するというのが大凡のやり方。

ある時間足では上昇トレンドを示唆するが、更に大きい時間足では下降トレンドの最中だったりする事がある。一つの視点では足元を掬われかねない点など、上記のパターン認識と非常に近い作業である事から、脳の同じ部位に負荷が掛かっている可能性を個人的には推してみたい。

この事から、行列推理によるIQスコアが高い人は投資でも良い成績を残しているんじゃないか※チャート分析は人の数だけ存在するので具体例は控える。

 

仮説3

男女差と投資成績

一般的には、投資は女性の方が向いているという見解が多い。私もそうだと思う。男性に強いとされる野心や勇気というものは投資にはマイナスに働くんじゃないか。※男性脳女性脳らしきものがある前提で述べている。また、投資は保守的であるほど「負けにくい」という主観のもとで判断。あくまで予想なので。

しかし、積極的じゃないと(機会に試行しないと)「大きく勝てない」のは確かなので、プラスかマイナスかでいうと女性に分があると思うが、収支のパフォーマンスなら全く違った結果になると予想する。今回はパフォーマンスの調査をしていないのでココで検証はできない。

 

検証

本題の検証内容に入る。
IQテストを投資家100名、一般100名の計200名に実施。上の仮説のようにIQによって投資成績に差は出るのか。また、投資家と一般被験者のIQに差はあるのかを検証。

統計を取るにあたってまずは最も大切な定義付け。

  投資家:投資活動を一度でも行った人。デモを含む。商品の違いは問わない。
一般被験者:投資家じゃない全ての人。

こんな感じでいく。

 

一般被験者には性別のみを訊ねたが、投資家には以下の項目を埋めてもらった。

①投資経験年数
②収支 + or –
③投資スタイル(時間軸)
④性別
⑤職業 (任意)

①一年刻みで集計。一年未満は0年として扱う
②細かいトータル収支は集客に影響が出るので断念。
③主に「スキャルピング」「デイ」「スイング以上」の三つに分けた。複数のスタイルを持つ場合、スタイルが主観(被験者)のもとで定まっていない場合は取引している各スタイルに一人としてカウントした。

例:スキャル〜デイの二つを行う人はスキャルピングとデイの合計人数に一人としてそれぞれカウント。

④性別で脳の思考パターンはそれぞれ異なると言われるが投資に性差は現れるのか。また女性投資家の割合はどのくらいなのか。

 

被験者は、私が個人的に身の回りに声を掛けただけでは「私の身の回り」という母集団ができる。これはある種の偏りを生みかねないので、なるべく多くの人を巻き込んで被験者を募り、結果99%を面識のない人達で構成する事ができた。

しかし、被験者は全て無作為に選ばれた訳ではなく「受験を希望した人」と「選ばれて受験した人」の両者が存在する。そこに明確な線引きはされていない。”統計”の表現を用いるには、余計なバイアスが無いフラットな条件のもとで行いたかったが、現実的にイチ個人ができる調査の限界だったとご理解いただきたい。とはいえ数万人規模で行われる調査では、学校施設を通したりなどほぼ半強制、つまり無作為に抽出できるが、中には「ちょうど受けたかった人(受験を希望する人)」の存在も織り込んでいる。

今回の調査は、これらと比べても余程の偏りは無いと思われるが、ある程度のゆらぎが起こる可能性は考慮しなければならない。以上、様々な要因から正確な理論値を導き出すのは困難となった。

 

IQの補正について

現代の日本人平均IQは105とされているので、ここで受験した一般100名の平均と日本人平均IQの乖離を補正する事によって今回テストの信憑性を上げるものとする。

本来であれば総人口の平均IQは100になるように構成されているので、この平均IQ100と比較するべきだが、今回はすでに(おそらくほぼ)日本人で構成された母集団が出来上がっているので、こっち(日本人平均IQとの比較)の方がより正確といえる。

なぜ今回テストが総人口の平均IQから乖離する前提で進めるのかについてはフリン効果を挙げたい。フリン効果とは、人類が様々な要因(栄養・文化等)から年々IQが上がっているというもの。つまり今回テスト作成時点の総人口平均IQ=現代人平均IQとは限らない。全員がIQ120を出せばそこをIQ100として再計算する必要がある。

 

以下の例を見て欲しい。

例1 一般被験者平均IQデータ

一般被験者平均IQ114
被験者a IQ120
被験者b IQ118
被験者c IQ105
被験者d IQ84
被験者e IQ99
被験者f IQ101
被験者g IQ145
被験者h IQ140

以上の結果になった場合、「今回のテストが甘かった」と考えるのがIQの性質上自然といえる。その乖離を埋める計算式は以下の通り。

一般平均IQ – 日本人平均IQ = A

全被験者IQの実測値全てにAをマイナスし補正値とする。それは偏差をイメージしている人には違和感があるかもしれない。補足すると、仮説で説明した通りIQの分布はほぼ正規分布となり、中央(IQ100)から離れれば離れるほどその希少性は加速度的に増していく。

IQ100とIQ110の出現率の差は1/2人と1/4人の違いしかないが、IQ170とIQ180の差は1/653330人と20741300人ほどの開きがある。例えるなら、地球の中心に向かって穴を掘り進むといずれ空気が鉄のような抵抗を見せるように、IQも中央値から離れるほどその重みは増す。しかしそれは概念的な考え方であり、今回のテストは何問中何問正解かによってスコアリングされているので、中央に近い値から遠い値まで同じレベルでスライドさせる事にした。

よって上記例1の補正は以下例2の通り。

例2 日本人平均と一般平均の乖離の補正

 

 

結果

補正値を求めるためにまずは一般被験者100名の平均IQから。結果はIQ112.88となった。
よって以下の補正が行われる。

一般平均IQ 112.88 – 日本人平均IQ(IQ105) = 7.88

A= 7.88

このAを実測値全てにマイナスする。
テスト結果から7.88を引いた値が大凡のIQだろうというのがココでの考え方。しつこいようだが全体の平均は常にIQ100でなければいけないので、平均がIQ113のままという事は性質上あり得ない。

 

結果1

投資家のIQは高いのか

 

表3 一般被験者と投資家

一般被験者:IQ105.00
       投資家:IQ112.53

正答率でいうと10%前後の開きがあり、「投資家である」と「IQの高さ」には0.29の相関が見られた。統計学的には弱い相関があるという事になる。一般的な相関係数の目安を下に貼っておく。

表4 相関係数

IQの目安では、IQ115で「一般的な学校のクラスイチ秀才レベル」と言われているので、投資家平均IQ112というのは、感覚的にはクラスで2〜3番目くらいの人の集まりという感じなんだろうか。

そもそもIQ115の出現率は1/6.3人なのに何故クラスで一番? 6.3/40人で6人くらいは居るんじゃないの?と思う人も居るかもしれない。そこで無作為抽出される確率と上位○%の差を認識したい。

例えば、ただの1/40(2.5%)とは、冬休み明けに学校に行った時、いきなりクラスの日直にされるレベルの確率となる。授業中に名指しされ教科書を読まされるのも同じ。これは割とあるあるだと思う。※後者は試行回数の多さに注意。

一方、上位2.5%は偏差値でいう70弱にあたり、学力(大学別)でいう東京大学(67.5〜72.5)程度にあたる。スポーツを例に挙げると、甲子園に出場できる高校(全国平均)は上位1.25%程度。

これらをIQに換算すると上位2.5%=131以上、上位1.23%=IQ134以上となる。「普通のクラスから東大や甲子園に行く人ってそう簡単には出ないよなぁ。まして自分が目指すとなると」と考えれば上位〇%の重みが分かる。

話は逸れたが、以上の事から投資家IQ112はそこそこ高いと言える。
気をつけなければならないのは、知能は(環境が平均的な水準を保てれば)遺伝的なものとされているので、高いIQが一因で投資家になったとしても、投資家から被験者を抽出するとIQが高い傾向にあるだけで、投資家になったからそれにIQが追従して高くなるという関係には無い。

表5 ほぼ正規分布(総人口IQ)との比較

曲線にすると他の分布が汚くなるのでこれで我慢して欲しい。

一般平均IQと総人口IQにズレがあるのは、総人口は平均IQ100を基準とするが、対して一般平均IQは日本人平均IQ105となるのでこのズレは正しい。

 

仮説表2『投資家平均IQの分布予想』の「中央値100±15(1σ)からどのくらいはみ出すか」を計測。
正規分布の1σ区間内は全データの68.27%である事に対し、投資家が一般平均の1σ区間内に収まったのは64%となった。この値が小さいほど投資家のIQにばらつきが大きいと言えるが、この結果ではそのような特徴は見られないと言える。つまり投資家のIQは一般平均IQよりは高いものの、同じような分布である事が分かった

 

米ウィスコンシン州(1992-1994)の職業別IQランキングを参考に「投資家」はどの辺りに位置するのか見てみる。

表6 職業別IQの一覧表

このグラフの見方は、その職業の人が100人居るとすると、IQの高い順に並べて11位~25位を右端のブロック、そこから右から順に26~50位、51~75位、76~90位、計4つのブロックで構成されている。分布の端(上位10%と下位10%)を切り捨てているのは、平均化するために突出したIQを数えないようにしているため。

 

結果2

IQは投資成績に影響するのか

表7 収支別平均IQ

収支+:IQ113.85
収支-:IQ111.07

数値的には若干の差こそあるように思うが、相関は0.11。つまり統計はIQと投資能力に相関関係は無いと示した

先ほどの結果1から、投資家はそのIQの高さから投資家になったとしても、それは「なるべくしてなった」とは少し違うのかもしれない。

例えば、外に出て視界に入った人を捕獲し、投資をやらせようと思い先にIQを計測しても、(現時点では)その結果からその人の投資成績の傾向を予測するのは不可能だという事になる。

では他のデータに何か成績に影響しているものはないか探してみたい。

 

結果3

男女比率と性差

仮説『男女差と投資成績』を見るためにはまず投資家を構成している男女比率から出さなければならない。

表8 投資家(100名)男女比率

男性:84%
女性:16%

100人の中に女性は16人しか居なかったという事になる。一つのサンプル(被験者)を構成しているのは6択35問から成るテストなので、コイントスほどのゆらぎが起こる可能性は低いが、信憑性が著しく下がるのは承知願いたい。

 

次に男女別の投資成績を見てみる。

表9 投資家男女別勝率

男性:勝率47.6%
女性:勝率75%

「女性」と「勝率」の相関は0.2。統計的には若干女性優位のギリギリ弱い相関ありを示しているが、サンプルの少なさからここから崩れる可能性はいくらでもある。※この相関は(おそらく)偶然によって成り立っている事が後の結果で分かった。

ここで男女別IQも見てみる。

表10 男女別平均IQ

男性:IQ112.86
女性:IQ109.76

若干男性優位に見える。今回テスト(行列推理)によって問われるものは流動的な推理能力にあたり、元々男性が得意とする(IQってホントは何なんだ?より)事を踏まえればこれくらいの差は自然なのかもしれない。テストの種類によっては更に差が広がる事もあれば、逆転する事もある。※一般被験者の男女別でも同様レベルの差が見られた。

女性が投資成績において優位である一方、IQスコアは男性優位の結果となった。この事からも、IQによる投資成績への影響があるとは考えにくい

 

結果4

表11 投資スタイル(時間軸)と勝率

デイが頭一つ低いように見える。
これも結果3『男女別勝率』と同じように別の要因が強く影響している。

 

結果5

表12 投資スタイル別IQ

スキャル:IQ111.40
  デイ:IQ112.52
スイング:IQ113.6

有意と言えるような差は見られなかった。集計始めはそれらしい傾向を観測できたがデータが増えると収束してしまった。
相関なし。つまり、これから投資を始める人にIQテストを受けさせても、そのスコアによって投資スタイルの傾向を予測するのは不可能という事が分かった。

 

結果6

表13 投資年数と勝率

今回の調査項目で一番成績に影響を与えたのは投資年数だった。「収支」と「年数」の相関は0.35。1~2年の間で大きく勝率が上がっている。気になるのは3~4年の間に唯一谷ができている。

各市場のチャートを見てもらいたいが、その期間の相場にふるいをかけるような特別大きな動きがあるようには思えなかった。もしかするとこの3~4年の期間は心理的節目として何か機能するものがあるのかもしれないが、今回のデータ上では、例えば、その期間に「スタイルが変わる傾向にある」など兆候のようなものは見られなかった。

この期間以外は年数に応じて右肩上がりで勝率は上がっていく。注意すべきなのは、長く相場に触れているから勝てるのか、勝てるから退場せずにいられるのか、それはどちらの要素もあると思うが、ハッキリした所は分からない。ただこのデータからは、2年生き残れる資金管理をしていれば生存率は上がるだろうという逆算的な考え方ができる。

上の結果3『男女別勝率』にて女性優位な事、結果4『スタイル別勝率』にてデイの勝率が低いという誤った認知を招いたのがこの投資年数。これらを踏まえてもう一度見てみる。

 

結果7

表14 男女別勝率と年数

この表の「女性」からは、勝率が高いと同時に年数も高い事が分かる。相関係数的に、収支に対して年数>性別が成り立っているため、この勝率の高さは年数によって引き上げられているものと考えられる。

つまり、女性だから勝率が高いというより、女性に投資年数が高い人が偏っていた(偶然かどうかはココでは分からない)から勝率が高くなっていたという可能性が大きい。全く別の要因〈投資年数〉によって相関を持ってしまったもの。

 

結果8

表15 スタイル別勝率と年数

グラフが反転して申し訳ない。

結果4『投資スタイル(時間軸)と勝率』ではデイが頭一つ低いように見えたが、「年数」と併せて見ると、デイの勝率の低さは年数の低さが影響しているものであり、年数比率で考えるとスキャルの勝率の高さが目立つようになった。

また、年数を重ねるとスイングに移行する傾向が見られるが、それが勝率の高さに与える影響はスキャルほどではない事が分かった。

注意しなけらばならないのは、十分なサンプル量によるスキャルとスイングの同年数の比較をしなければ、それらは統計的には十分な材料と言えないままだという事。

 

結果は以上。

 

考察

IQと投資成績に直線的な相関は見られなかったが、(偶然でなければ)一つ矛盾を残ってしまったデータがある。

表16 IQグループ別勝率と年数

IQを上位20%、40%、60%、80%、100%の5つ(20名毎)にグループ分けした。このグラフを見る限り上位40%までは年数の割に勝率が明らかに高い。直線的な相関には無かったが、IQが一定水準を超える事で勝率に良い影響を与える場合があるんじゃないか。

しかし、「長く相場にいる事で勝てるようになる」「勝てるから長く相場で生き残る事ができる」とすると、上位80%の生存率の高さ(勝率及び年数)に対する、「上位20%、40%の年数の低さ(すなわち生存率の低さ?)」が上の「IQによる好影響」では説明がつかない。

つまり、「IQ高い人は勝ってるのになんで長生きできないの?」という疑問が生まれる。10年後にデータを取ったとしても同じようなグラフを描いているとしたら、IQが高い人は勝率が高いままだが、人が入れ替わっている(10年前の人はいない)のに対して、IQが低い人はそこそこの勝率を維持しながら生き残っているという事になる。

※上位80%を相対的にIQが低いと表現したが、この域は分布的には総人口の中央付近にあたるので決して低くはない。

 

上の矛盾について3つのパターンを考えた。

 

単なる誤差や偶然

多分これ。

 

IQが高い人は勝ち逃げしている

可能性はゼロではない。

 

IQが高いと陥るギャンブラーの誤謬

IQが高いとギャンブラーの誤謬に陥りやすいという統計データがある。ギャンブラーの誤謬とは例えば、コイントスで表が偏って出た場合、次こそは裏だろうと信じてしまう確率的思考の歪み。つまり逆張り。IQが高い人はその傾向にあると上のリンク先では言及され、また、IQが高い人はギャンブラーの誤謬に陥りやすい一方で感情による意思決定力が低いとも検証結果で出ている。

似たような話で、意思決定論の観点から意思決定モデルの一つプロスペクト理論を挙げたい。

プロスペクト理論

人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向(損失回避性)があるということである。(Wikipedia引用)

つまり感情が物の価値を歪めてしまう現象の事。

 

整理する。

「IQが高い人はギャンブラーの誤謬に陥りやすく感情による意思決定力に”負の相関”がある」のならば、「IQが低い人は感情による意思決定力が高い」という事になる。つまり、感情が支配する意思決定モデルであるプロスペクト理論とは、IQが低い人が陥りやすい傾向にある現象なんじゃないか

これら要素を併せて検証している文献は見当たらないのであくまでココの仮説でしかない。以下の図を参照に。

図3 ギャンブラーの誤謬とプロスペクト理論

これらが正しければ、ギャンブラーの誤謬に陥った人は逆張りを繰り返し、プロスペクト理論に陥った人は利益に対して損切りができない。すなわち、両者ともトレンドに弱い事になる。

この事から、分布の端にいるIQが高い人(=ギャンブラーの誤謬)とIQが低い人(=プロスペクト理論)に対して、IQ分布的に偏っていない上位80%(総人口の中央付近)(精神構造が安定した人?)の安定した勝率と投資年数は納得できなくもない。

それでもIQが高い人の勝率は説明できない。仮説1のように『平均を押し上げる何らかの層』が今回観測できなかったどこかに隠れているんだろうか。そうするとここまで辻褄を合わせる事ができるし、逆に全てがひっくり返る可能性もある(マジか)。

相場におけるギャンブラーの誤謬とプロスペクト理論の意思決定のパラドックスに続く「三つ目」が存在すれば、そしてそれが理論として明確に手にできれば、私たちの投資活動にも少しは良い影響がありそう。

 

 

おわりに

 

フリン効果

上で説明したフリン効果(人類が様々な要因により年々IQが上がっている現象)が今回の年数で見るデータに起きている可能性があるかもしれない。投資年数を経ているという事は実年齢もそれだけ重ねていると考えられるので、加齢による流動的知能の低下が事実であったり、今の若い現代人の(このテスト形式による)IQが高ければ、「投資年数が高い→IQが低くなる傾向」は説明できる。

 

サバンナ原則

上で紹介した『知能のパラドックス』で扱われているもので、簡単に説明すると、「映画で感動できるのは脳が映画を作り物だと認識できないから。現実世界と脳のギャップと言える。生きていく中で問題解決能力が発達した知能が高い人はそのギャップが小さいだろう」というもの。このサバンナ原則が(コレに対して私は懐疑的)それなりに正しいとすれば、本書では紹介されていないが、プロスペクト理論もその一つであると考える事もでき、上のモデルを支えてくれる論証となり得る。

 

専業投資家は投資家全体の9%で、平均IQは補正値で120.312。カテゴリ別では一番高い記録になった。

正規分布でいう異常値(3σ)に出たのは全体の2%(4/200)。投資家に3人、一般に1人。(-3σ)に出たのは全体の1%(2/200)投資家に0人、一般に2人。

実測値でIQ130を超えた辺りから少し特殊な人が多いように感じた。現役東大生、京大卒、研究者、医師、会社経営、専業投資家、大手エンジニア、MENSA会員、ルービックキューブを高速で揃える人など。

 

 

ギャンブラーの誤謬に陥りやすい人が居たとする。その人が取るべき行動は、それに陥らないような手法を持つべきなのか、むしろそれを軸にした心地良い手法にするべきか、それは各々で検証するしかないが、今回のIQテストの結果から自分自身の知らない側面を見出すための一助になれば嬉しい。

検証データを100名というのは少し急ぎ過ぎたかもしれない。また仮説を練って1000人くらいを目標にやってみたい。より良いデータにするために、主観や余計なバイアスが入らないように観測者として”綺麗な”データ収集を心掛けていきたい。今回でも何か見落としている点などがあればご指摘いただきたい。そうやって少しずつ良いデータになれば私としても嬉しい。

テストの制限時間25分に説明を含めたら一人当たり30分はかかっている。30×200=6000分。6000/60m(時間)/8h(1日)=仕事量にして約12.5 日。土日を挟むと約2週間と2.5日分をご協力をいただいた事になる。大したお返しもできず、この場で申し訳ないが改めて感謝したい。

 

参考文献

http://www.health-net.or.jp/tyousa/index.html

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/journals/

https://gigazine.net/news/20150304-human-smarter/

http://www.waseda.jp/prj-intelligence//

http://greyenlightenment.com/iq-and-morality-iq-and-job-performance/

知能のパラドックス
サイエンスフィクションに近い。学術的なモノではないが、このサバンナ原則は読んでいて面白い。

IQってホントは何なんだ?
日本に浸透している誤ったIQの解釈について最初から最後まで怒っている本。

なぜ人類のIQは上がり続けているのか
フリン効果の人。現代的なIQの切り口は今後の基礎基本となりそう。より学術的でアクビが出るような内容だが、IQに関心がある人にはまずこれをオススメしたい。

チャーリーのブログ
データサイエンティスト。ココで書いたIQに関する基礎分析を支えてくれる。また出現率等の多くのデータを参照させて頂いた。

 

上記リンクの数々、文献に携わる全ての人に敬意を表したい。なお、この記事のリンクは一切アフィってないので気にせず好きなだけ踏んでもらいたい。

 

 

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